第10回(1996年度)地質調査所研究講演会

「メタンハイドレート −海底に眠る次世代天然ガス資源を求めて−」


日時 :平成8年6月10日(月)10:00開場(10:30開演)
場所 :三会堂ビル9F 石垣記念ホール
〒107 東京都港区赤坂1-9-13 TEL:03-3582-7451
(地下鉄銀座線虎ノ門駅下車徒歩5分)(地下鉄丸ノ内線・千代田線国会議事堂前駅下車徒歩7分)

主催    :工業技術院地質調査所・(財)日本産業技術振興協会
協賛(予定):(社)東京地学協会・日本地質学会・石油技術協会・物理探査学会・天然ガス鉱業会・(社)日本エネルギー学会

開催にあたって

 近年,非在来型エネルギー資源として「メタンハイドレート」が注目を浴びるよう になってきました.メタンハイドレートとは,水とメタンガス分子からなる固体の結 晶で,最近の調査,研究により日本周辺海域に大量に存在することが明らかになりつ つあります.地質調査所では,所内に「メタンハイドレートプロジェクト推進チーム 」を組織し,調査研究を推進しています.

 本講演会では,これまでに地質調査所が中心となって取り組んできたメタンハイド レートの合成実験,メタンハイドレートの分布及び資源量推定,探査手法開発などを 中心に研究成果の発表を行ないます.また,産官学共同で進めている基礎研究から応 用研究結果を紹介し,次世代の天然ガス資源としてのメタンハイドレートの見通しに ついて解説します.さらに,天然のメタンハイドレート層の学術ボーリング(国際深 海掘削計画/ODP)結果について最新の成果を報告するとともに,メタンハイドレー トとグローバルな地球環境変遷との関係や,巨大海底地すべりや古海洋学などの地質 ・地球科学現象との関係,さらに今後のメタンハイドレート研究の展望についても解 説します.

参加要領

 参加費   :聴講無料(ただし,一般参加者はテキスト代実費)
 申込先   :(財)日本産業技術振興協会
          〒105 東京都港区虎ノ門1-19-5 虎ノ門1丁目森ビル5F
           TEL:03-3591-6272 FAX:03-3592-1368
 申込方法  :参加申込書に参加者の氏名・所属等をご記入の上,申込先へお送り下さい.FAXでの申込もお受けいたします.なお,聴講券は発行しませんので,申込済みの方は当日会場へ直接おいで下さい.
問い合せ先 :工業技術院地質調査所総務部業務課広報係
〒305 茨城県つくば市東1-1-3
TEL:0298-54-3520 FAX:0298-54-3504

プログラム

午前の部
10:00       < 開 場 >

(司会 地質調査所地殻化学部地球化学課長 今井 登)

10:30−10:35  開会の挨拶

地質調査所長 佐藤 壮郎

10:35−11:00  地質調査所におけるメタンハイドレート研究

地質調査所燃料資源部長 奥田 義久

 メタンハイドレートとは何か?その実態と資源開発の可能性に関する地質調査所の メタンハイドレート研究の概要について紹介する.

11:00−11:30  合成実験によるメタンハイドレートの安定条件の検討

地質調査所地殻化学部地球化学課研究員 前川 竜男

 海底堆積物中のメタンハイドレートがどのような温度・圧力条件のもとで安定に存 在しているかを知ることは,メタンハイドレートの海洋探査や資源量の評価に重要な データを提供する.地質調査所では,様々な海洋環境を模した条件下でメタンハイド レートの室内合成実験を行い,包含されるガスの組成や塩分濃度の違いによるメタン ハイドレートの安定条件の変化について検討しており,その実験結果を報告する.

11:30−12:00  [特別講演]コンピュータ・シミュレーションによるメタン
ハイドレートの物性値推算

大阪ガス(株)基盤研究所エネルギー科学課長 中村 和夫

 物性研究の一環として,合成ハイドレートの実測値を補完するために,計算化学に よる物性値推定の手法を検討した.分子の動きを計算機上で再現することにより,実 験では出来ない条件や,合成・単離の難しい構造のハイドレートの物性値を推算する 方法を検討した.

12:00−13:00    < 昼 食 ・ 休 憩 >
Video上映(1回目,ロビーにて)
午後の部

(司会 地質調査所燃料資源部燃料資源課長 棚橋 学)

13:00−13:20  [特別講演]メタンハイドレート開発技術の研究開発について

通商産業省資源エネルギー庁石油部開発課長補佐,海外開発班長 國友 宏俊

 資源エネルギー庁は,国内石油・天然ガス開発第8次5ヵ年計画に基づき,非在来 型天然ガス資源として国内での存在が期待されているメタンハイドレートの,国内地 質調査及びその開発に必要となる技術開発を推進している.我が国のメタンハイドレ ートに対するエネルギー資源としての開発計画は,世界をリードするもので,エネル ギー分野での国際的貢献にも寄与する.

13:20−13:50  メタンハイドレートの分布と資源量の推定

地質調査所海洋地質部海洋地質課主任研究官 佐藤 幹夫

 低温高圧の条件下で安定なメタンハイドレートは,自然界では永久凍土域及び大陸 斜面以深の海底下でその存在が知られている.地震探査やハイドレート試料回収など から推定されている世界と日本のメタンハイドレートの分布を紹介するとともに,南 海トラフ,日本海東縁海域など日本周辺海域での分布の詳細と資源量推定の結果を紹 介する.

13:50−14:20   メタンハイドレート探査とBSRの持つ意味

地質調査所海洋地質部海洋地質課主任研究官 倉本 真一

 メタンハイドレートの広域探査として有用な物理探査技術について最近の技術を含 めて概観し,今後の探査技術動向について述べる.またその際に中心的探査技術とし ての弾性波探査におけるBSR(Bottom Simulating Reflector)記録の持つ意味と,そ れから導き出される地球科学的情報について整理し,解説する.

14:20−14:40    < 休 憩 >
           Video上映(2回目,ロビーにて)

(司会 地質調査所燃料資源部燃料鉱床課長 徳橋 秀一)

14:40−15:10   コア温度測定によるメタンハイドレートの産状と分布
            −ODP Leg164 米国東方ブレークリッジ海域での例−

地質調査所燃料資源部燃料資源課主任研究官 渡部 芳夫

 昨年秋に行われた学術ボーリング(国際深海掘削計画/ODP)では,海底に分布す るメタンハイドレートの存在が初めて指摘されたアメリカ東海岸沖のブレークリッジ 海域に調査井を掘削し,現実の地層中のメタンハイドレートを回収した.本講演では ,どのような地層のどのようなところにメタンハイドレートがどのぐらい分布してい たかを,ボーリング試料の温度による検討をまじえて報告する.

15:10−15:50  [特別講演]海底下にメタンハイドレートを探る
            −ODP Leg164の成果とメタンハイドレート研究の展望−

東京大学大学院理学系研究科教授 松本  良

 昨年秋に行われた,世界で初めての海底メタンハイドレートをターゲットにした学 術ボーリング(国際深海掘削計画/ODP)の最新の成果を紹介するとともに,メタン ハイドレートと地球温暖化,地球環境変動,様々な地質現象との関わりについて考察 し,今後のメタンハイドレート研究を展望する.

(司会 地質調査所燃料資源部主任研究官 名取 博夫)

15:50ー16:15  総合討論
16:15−16:20  閉会の挨拶

地質調査所次長 長谷 紘和